私はアセクシャルなので恋愛感情が湧きません。
読書が趣味なのに恋愛っぽいシーンが出てくると、「ええ……」となってしまいます。
※もちろん恋愛小説ではありません。
※特にミステリー。生きるか死ぬかの中で、のんきな恋愛シーンが出てくると、
「今そんなことしてる場合かよ~。脇道それずに本編見せてくれよ~!」ってなる。
「恋愛要素のない小説」といったキーワードで検索するのですが、あまりそういった記事も多くはないんですよね。
今の御時世、恋愛が好きって人ばかりでもないと思うんです。
私のようなアセクシャルや恋愛に疲れてしまった人もいるはず。
なのでここではアセクシャルの私がこれまでに読んで面白かった小説をご紹介しようと思います。
※ちなみに私は何故か同性愛ものは読めます。
なのでそういう小説も入っておりますのでご了承ください。
- そして誰もいなくなった (アガサ・クリスティー)
- 恋人たちの森 (森 茉莉)
- 鳩の栖 (長野 まゆみ)
- 李歐 (高村 薫)
- 悪魔が来りて笛を吹く (横溝 正史)
- サイゴン・タンゴ・カフェ (中山 可穂)
そして誰もいなくなった (アガサ・クリスティー)
アガサクリスティーは大好きで片っ端から読みました。
女性作者なのにあまり恋愛っぽい展開はないように思います。
おばあちゃん探偵のミスマープル、強烈な個性のポアロなどが探偵役だからですかね。
この二人の周囲にもあまり恋愛の匂いはしません。
ミスマープルの甥夫婦がちらっと出てきますが、旅行するきっかけとかそんな程度です。
クリスティの魅力はですね。鮮やかなトリックもさることながら人物描写が優れていることだと思うんですよね。
個性的で実際にいそうな女性キャラがたくさん出てきます。
噂好きのおばあちゃん同士の会話とか思わずニヤリとしてしまう。
美味しそうな食べ物もいっぱい出てきますよ!
おすすめしたいのは山ほどあるんですが、中でも衝撃を受けたのが本作ですね。
薄い単行本なんですけど、密度が濃いんです。
今ではよく知られたトリックの古典みたいな感じですが、私は本作を最初に読んだのでとても衝撃的でした……!
恋人たちの森 (森 茉莉)
森鴎外の娘さんの著書です。
すごい独特の世界観……!
句読点の打ち方も個性的だけど、甘美な世界観に飲まれてだんだん気にならなくなってきます。
日本人なのに外人みたいな洒落た言動をする登場人物たち。
小物一つ一つにまでセンスが光ります。
4つの短編からなる本作ですが、どれも横たわるのは甘美な恋愛模様。
異性愛が1つ、後の3つは男性同士の恋愛です。
全体的に物悲しいのでハッピーエンド大好きって人は辛いかも。
でもBL好きには最後の『日曜日には僕は行かない』は刺さるものがあると思います。
私はこれが好きで何度も読んでます。
どの短編も恋愛メイン。
でも恋愛というかもっと深い欲求……欲望、崇拝、賛美といった感じがしました。
猛烈な欲望が描かれているのに、寵愛される少年の描写が神話の美少年のように美しいせいか、生々しさをあまり感じません。
鳩の栖 (長野 まゆみ)
長野まゆみさんの小説も片っ端から読んでいます。
ため息が出るほど繊細で美しい世界観。
メインになるのは線の細い、丁寧な喋り方をする少年たちです。
普通だったらこんな少年いないよなあってなるんですが、慣れてきます。
むしろこういう世界で生まれ育つのはこういう子たちだろうとすら思えてきます。
同じ少年でも上で紹介した『恋人たちの森』は神話の美少年かよって感じなんですが、こちらはもう少しリアルに寄せてますね。ちょっとした十代の嫉妬とか葛藤に悩む少年たちが出てきます。
5つの短編からなる本作。
BL好きには『紺シリーズ』の浦里と真木に萌える人も多いんじゃないでしょうか。
私も萌えた。続編の『紺極まる』も読みました。この二人の今後は切に読みたいです。
でも本作で一番印象的だったのは表題にもなっている『鳩の栖』ですかね。
ちょっと泣きました。
李歐 (高村 薫)
以前に書かれた『わが手に拳銃を』を大幅に改定したものです。
私にとってこれが初高村作品でした。
高村作品の特徴は一言で言えば”重厚”。
世界観や人物描写が微細に書き込まれていて、相当調べて書かれたんだろうなあというのが伝わってきます。
そして一冊が厚いので読むのにエネルギーがいる。
けど読み勧めてしまう面白さがあります。時間のある時にガッツリ読みたいです。
基本男同士のやり取りが多いです。工場や警察が舞台になることが多いからですかね。
全部読んだわけではありませんが、女性が目立ったのって『照柿』くらいのような気がします。最近のはまだ読んでいないのでわかりませんが。
『冷血』も気になるんですが上下巻の上、分厚く、内容が一家四人殺害という重そうな内容からまだ読めてません。
本作は男同士の恋愛度高め、女性も絡んできますが、まあまあ……といった感じです。同じ話でもかなり印象の違う『我が手に拳銃を』と『李歐』なので読み比べてみるのおすすめです。
『我が手に拳銃を』のほうが若いというかとっつきやすい印象はあります。
『李歐』はより洗練された印象を受けました。
悪魔が来りて笛を吹く (横溝 正史)
横溝作品の閉鎖的な村やおどろおどろしい見立て殺人などの雰囲気が好きです。
ただヒロインが似たような感じの美人が多くて苦手だなと思うことがありました。
事件の裏に男女の恋愛が絡むものも多いです。
その中にあって本作はヒロインポジの子が珍しいタイプで好感が持てました。
内容は金田一シリーズの中でもエグい愛憎劇ですが、ここまで突き抜けているといっそ面白いとさえ思えます。
金田一シリーズの中で一番好きな話です。
サイゴン・タンゴ・カフェ (中山 可穂)
中山さんの本は本作と『感情教育』『白い薔薇の淵まで 』を読みましたが、女性同士の
恋愛を多く書かれる方のようです。
なので私のような者は安心して読めます。(笑)
ただ同性愛者であることによって登場人物たちが苦しむ様が本当に辛い。
正直自分がアセクシャルだからか、異性愛と同性愛にそこまで違いがあるんだろうか、と思ってしまいます。
社会の目と愛に葛藤する女性たちの辛さがこっちにまで伝わってきて、辛い。痛い。
恋愛に興味ない私ですら「この二人に幸せな結末を……!」と思ってしまうレベルです。
本作は5つの短編が収められています。
中でも表題作「サイゴン・タンゴ・カフェ」が良かったです。
未来のある終わり方でほっとしました。